ざ・プレイス


「きゃああああ猿野せんぱ〜〜いっ!!!」


今日も今日とて、十二支高校の放課後は騒がしかった。
先日、元猿野天国親衛隊が目標の人物を再発見して以降。
親衛隊の活動は、日ごと激しさを増していた。

最近では、(自分達の学校生活はどうなのか謎だが)HR終了後部活に向かう天国の姿を捕まえようと、
かなり早い時間から女子中学生の群集が訪れていた。

そんな状態に、十二支高校野球部の面々は、すでに慣れてしまっていたようで。
今日は遅れずに来れるかなと、呑気に考えいるものもいた。

勿論、かすかな優越感と、ささやかな焦燥も残ってはいたのだけれど。


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さて、今日の渦中の人物はというと。

屋上で身体を横たえていた。


「…はー…。」
「毎度のこととはいえ、災難だな。」

おかしげに笑うのは、幼稚園の頃からの親友、沢松だった。
今は騒ぎの渦中の人物、猿野天国にひざを貸している。

まあ要するに膝枕の状態である。


「ああ……あいつらも懲りねえよな…。
 何でこうオレばっか気にすんだよ……。」

天国は手の甲を目に当ててやれやれといった風に言った。

「そりゃ仕方がねえな。
 頭脳明晰・運動上等・んで中学のときはクールな生徒会長様。
 ついでにフェミニストで、後輩思い。
 典型的「あこがれのセンパイ」だったんだからな〜。」

「……。」
ほめ言葉なはずだが、今の天国には確実に皮肉だった。

「まあ、あきらめるこったな。
 来年以降はあの後輩ズが十二支に大挙するだろうしな。」
にっこり笑ってなかなかに疲労感を拡大させる台詞をいただいた天国は、さらにげんなりした。


「あ〜さようなら静かな高校生活。」


さめざめと声を出す天国に。

ふと、沢松は言った。


「…けどまあ、そう嫌がることもないんじゃねえのか?
 キライじゃねえだろ?」


「…そりゃ別にキライじゃねえよ。
 ただ…。」


「「ちょっとしんどい。」」



一瞬合わさった声に。

天国は笑った。



「ホレ、行って来い。
 部活だろ。」


「ああ。」



天国は起き上がると、屋上から降りていった。



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階段を下りていくと、もうひとつの女性集団が目に入った。


犬飼の「地獄のそこまで追っかけ隊」だ。


天国の目の前を暴風のように横切って行く。


しかし、天国は不思議に思った。

「…?あいつら何で走ってんだ?
 お目当ての奴いなかったじゃねーか?」


そう。その最前には彼女らのお目当ての犬飼の姿がいなかったのだ。
だが、妄執というかなんというか、彼女達の勢いは衰えては居なかった。


「…傍目で見てるとおとろしいもんだ…。」

しみじみと思っていると、横の教室から息も絶え絶えの犬飼冥が現れる。


「……やっといったか……。」

「おー、お疲れさんだな。」

天国は同情と面白そうな視線を向けた。


「うるせえ…お前も同じだろうが…。」

「まあな。」

おんなじように、助けられてるよ。


こいつを見てると、よく分かる。
オレがあいつに助けられてるように、こいつも辰羅川に助けられてるんだよな。


「…ま、お互いいらん苦労が多いけどいいダチがいてよかったよな。」


そう言って、天国は珍しく。
にっこりと犬飼に微笑みかけた。


犬飼は、天国の言うことにわけがわかんねー、という顔をしながら。

綺麗な笑顔に少し、頬を染めた。



「行こうぜ、部活。」


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「きゃーーーーーーーーーっ猿野センパイーーーーーーーーーーーーーっ!!」


「悪いっ、部活遅れるからちょっとどいてくれ!!」



「犬飼キューーンっ!!ここにいたのねーーーvv」


「………………っ、と、とりあえず、通してくれ…っ!!」




「お、無事到着したな〜。」
「うちの犬飼君もすこしずつ要領が良くなってきたようですね。良い傾向です。」



大狂騒の中、やはりどこかから見守っている影が、二つ。



しんどくても、辛くても。


帰る場所になってくれる奴らがいる。


それが分かっているから。


今日も回りに優しく出来る。


そんな気がした、一日。



                               end



ホントに謝罪しか出来ません…本当に本当に遅くなりました!!
冬真さま、本当に申し訳ありませんでした!!
一応シークレットと同設定ですが…。
なんだか沢猿+犬辰風味かも…いえ、沢猿で犬猿なんですけど…私としては…。
沢松を出すとどうしてもこういう雰囲気になります…。
長く長くお待たせした挙句こんなんで本当にすみません!

これを一目でも見て下さッたらと思います。
本当にすみませんでした!!


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